最後の恋
椎名が巻いていたマフラーは、椎名の体温が残っていて暖かかった。
なんだかいい匂いもする。
「あ…りがと」
言いながら何だか照れくさくなった。
いちいち面倒くさいくらいドキドキする。
初デートってこんな感じだったっけ?なんて、過去の恋愛を思い出したりしたけど、どれも昔過ぎてよく思い出せない。
「あ、ちょっと並んでますね」
遊園地に着くと、入場券の受付口には少し列ができ人が並んでいた。
こんなに寒い日でも休日ともなればみんな遊びにくるものなんだ。
「莉奈さんここで待ってて」
椎名はそう言うと、小走りでその列へと駆け出していく。
「え、ちょっと待って」
私はそんな椎名の後をすぐについて行き、一緒にその列に並んだ。
「俺買っとくから莉奈さんは入口で待っててくれていいのに」
私を見下ろしながら椎名は言う。
「いいって。私払うし、椎名向こうで待ってなよ」
「ダメですって。デート代は男が払うもんですから」
「大丈夫だって、私年上だし」
収入だって私の方が多い。
入社一年目の給料で椎名に払ってもらうのは申し訳ない気になる。
「年上も年下も関係ないっすよ、デートに誘ったん俺やし」
「だからいいってば」
「あのお?」
気がついたら並んでいた列の前にはもう誰もいなくなっていて、入場券の販売窓口からそう声を掛けられた。
「あ、すいません」
慌てて財布を出そうとしていると、その間に椎名が入場券を買ってしまっていた。
「はい、俺の勝ち」
ニッと笑う椎名に背中を押され、すぐにまた手を繋がれた。
「よっしゃ、行こっ!」
無邪気なその笑顔に、胸がキュッとなった。