最後の恋
「じゃあ、そろそろ行こうか」
時計を見ながらそう言って席を立とうとした時だった。
椎名が手を伸ばし、私の手を掴んだ。
「ちょっと待って」
その言葉に、また私は席に着く。
「何?どうかしたの?」
「あの…早川さんの事なんすけど」
早川さん?
名前を聞いただけで何だかドキッとする。
「多分やけど俺、早川さんに好意をもたれてるっぽくて」
うん、知ってる。
よーく知ってる。
「この間莉奈さん昼飯行ってきなよとか言ったでしょ?あの時電話番号聞かれて」
そりゃあ聞くよ早川さんなら。
「それから毎日連絡あるんです。番号でメールも送れるでしょ?だから毎日メールがきてて」
「そうなんだ」
「えっ!そうなんだってなんなんすか」
「えっ…」
椎名はちょっとムッとしたような顔で私を見ている。
そして真っ直ぐ私の目を見て言った。
「俺たちが付き合ってること、早川さんに言ってもいいですか?」
予想通りだった。
そんなことを言われるかもしれないとなんとなく今の空気で分かってた。
「隠しててもいずれバレるんやし、正直に言っておいた方が今後のためにもいいと思うんです」
真っ直ぐ私を見る目は、真剣な眼差しだった。