最後の恋
正直少し迷った。
言っておいた方が今後のためにもいいと言ってくれた椎名の言葉に、真面目に私と付き合ってくれているのだと改めて感じた。
だけど、心の中で同時に思う。
周りの目。後輩の早川さん、椎名狙いの女子社員のことを考えると打ち明けてしまうとどうなるのだろうと考える。
仕事は確実にやりにくくなる。
またどんな噂話が流れるか分からない。
「ごめん。まだ…言わないでほしいんだ」
結果、出てきた答えはこうなった。
だけどそんな私の言葉に椎名がすぐに口を開く。
「いつですか?」
「えっ?」
「まだ、って。いつになったら言っていいんすか?」
そう聞かれると、また考えて。
「もう少し…かな」
「一ヶ月とか?」
「うーん…」
一ヶ月なんてあっという間だ。
じゃあ二ヶ月?三ヶ月?
「ごめん…莉奈さん」
ぼんやりと考えていた私は、目の前から聞こえた言葉にハッとなる。
「ヒミツって言ってましたもんね…」
そしてその小さな声とシュンとなった表情に胸がギューッと締め付けられた。