最後の恋


「空いているところへどうぞ」


しばらくすると動き出した列の横で、係員の女の子がそう声をかけてくれた。


「莉奈さんこっち!」


椎名の声につられるように歩いていくと、可愛い真っ白な馬車の横に椎名が立っている。


「これっす!乗って!莉奈さん」

そしてそう言うと、近付いた私の手を引いてその馬車にエスコートしてくれた。



「ありがと…」


生まれて初めてだった。

手を引きながらこんな風にエスコートされることが。


人生で初めてだった。



雑誌の特集ではよく見かけていた。

車に乗る時にドアを開けてお姫様みたいにエスコートしてくれるとか。

だけど実際、そんなことをしてくれた人は今まで一度だっていない。

それに、こんな人がたくさんいる場所でこんなことをしてくれた人は椎名が初めてだった。

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