最後の恋


「俺はこれ乗りますね!」


椎名はそう言うと、私の乗る馬車を引く真っ白な馬に跨った。


すると、ビーッという音と共に動き出すメリーゴーランド。

軽やかなメロディが始まり、ゆっくりと動いて回り出していく。


なんだか懐かしい気持ちになった。

幼い頃に行った遊園地では、メリーゴーランドやコーヒーカップに乗った記憶が多い。

ゆっくり動いて、それが楽しくて。

だけどあっという間に終わってしまって。

そしてもう一回乗りたいと駄々をこねると、渋々また乗せてくれたりした。


遠い昔の思い出。

でも、ずっと覚えているあの頃の記憶。


「莉奈さん!こっち向いて!」


ぼんやりと昔を思い出していたその時、馬に乗る椎名の声に顔を上げると、携帯片手に私の方を見ていた。


「撮るで?はい、チーズ!」


そしてその言葉に自然とピースをすると椎名は「オッケー!いい感じっす!」と言って何度もこっちを振り返りながらニコニコ笑っていた。



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