最後の恋



都会の帰宅ラッシュは、今日も人で溢れていた。

満員電車の車内で吊り革を持ちながら私はふと周りを見渡す。


携帯を触っている人。
本を読んでいる人。
音楽を聴いている人。
疲れた顔でウトウトしている人。


周りを見渡せば、いつもこんな光景。


仕事を始めた頃は気にならなかったのに、今はいろんなことを考えるようになった。


この子は大学生っぽい、楽しそうだな、とか。

眠っているサラリーマンのおじさんを見ると、疲れてるんだろうなって思ったり。

制服姿の女子高生を見ると、いいな、懐かしいなとか思ったり。

そして、ちょっとかっこいいな、綺麗だなって思うような人がいたら、その人の指をチェックしたりするようにもなった。


左手の薬指。

指輪があるかないか。


それで結婚してるんだなぁとか。

子供はいるのかなぁとか。勝手に想像したりする。


ヒマつぶしといえばそうなんだけど、人間観察をしていると、いろんなことを勝手に考えてしまう自分がいた。


この人は幸せそうとか。
この人はそうではなさそうとか。


じゃあ…私は?

窓ガラスに映る自分の姿を見ながら私は考えた。


私は…幸せ?

電車に揺られながらふとそんなことを思った。


早川さんのあの言葉に、やっぱり少しダメージを受けているのかもしれない。


帰り道の足取りは何だか重く、トボトボ歩いて私は帰宅した。


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