最後の恋
「俺のこと…信じられへん?」
「そういうわけじゃない」
「だったら俺を信じてや」
「……うん」
強く抱きしめられたら、揺れている心を掴まれた。
その瞬間は、迷いが消えて。
「絶対ずっとそばにおるから」
そう言われたら、不安に侵されていた気持ちがほんの少しだけ晴れた。
それから二人で手を繋ぎ、家へと帰った私達。
ソファに座り、テレビをつけて並んで見ていた。
「もっとこっち来て」
少し空いていた距離。
それが、椎名のその声と優しく引っ張られた腕によって縮まる。
「ほんまに好きやで」
それから何回言われただろう。
「ほんまに好き?」
一体何回聞かれただろう。
朝まで繰り返された椎名の言葉からは、不安そうな気持ちがずっと読み取れた。
「寝ようか、そろそろ」
「えっ、泊まっていっていいん?」
明け方、カーテンの隙間から朝日が差し込んだ頃、私が聞くと椎名は嬉しそうにそう答えた。
不安にさせている。それが痛いくらい伝わってくる。
私も不安。だから…そばにいたかった。
離れるのが怖い。
揺れている自分が嫌だ。
そばにいれば大丈夫でしょ?
私も椎名も、きっと大丈夫だよね?