最後の恋
「だからプロポーズを受けて私は結婚を決めたんだけど。でもね、50%だった気持ちが結婚式の準備していくうちにどんどん増えていってるの」
エリはそう言うと、クスッと何かを思い出したかのように笑った。
「普通は結婚式の準備って喧嘩になるとか言うじゃん?」
「うん」
「私はすっごい喧嘩したなー」
「サキそうなんだ?でも私達、全然喧嘩になんてならなくてさ。プロフィールビデオとか作ってると楽しくて。知らないことが分かっていくにつれて、この人で良かったのかもしれないって思うようになって」
エリはすごく幸せそうな顔をしていた。
綺麗だと思った。
羨ましかった。
迷いなんてもうない。顔を見ているとそれが分かった。
「私はできちゃった結婚だったからプロポーズって本当に羨ましいよ」
ふと呟くようにサキがそう言った。
「プロポーズなかったの?」
エリが聞き返すと、サキは苦笑いをしながら話しだす。
「うーん…あったというかなかったというか。生理が遅れています、検査薬します、陽性反応でました、病院でも確定しました、どうする?そっか、じゃあ結婚しようか、うん、じゃあ結婚しよう。みたいな?」
「そうだったんだ」
「でも一応プロポーズじゃない?結婚しようってさ」
「うーん…そうなのかな?だって結婚せざるをえない状態じゃん?結局ユウトができたから結婚したようなものだよ私達は」
サキはそう言うと、ジョッキに入っていたビールを飲みほした。
「でもさ、それでも今が幸せなんだからいいじゃん」
「えっ?」
サキを見ながら、私は思いのままを口にした。
「旦那さんは優しいし、ユウト君は可愛いし。サキ幸せそうだもん」
結婚してからサキは独身時代よりも少しだけぽっちゃりした。
化粧も薄くなったし、あまり自分を着飾らなくなった。
だけど、会うたびいつも幸せそうな顔で笑う。
家庭が幸せで満たされているんだと思う。
だから独身時代のサキよりも、今のサキの方が私は好きなんだ。