最後の恋
「もしもし」
泣いているのを悟られないようにいつものように電話にでた。
「あ、莉奈さん?今大丈夫?」
「うん、大丈夫」
「何かこっち帰ってきてたらバタバタしてて。ごめん、連絡すれ違いばっかりで」
椎名の声を聞くと、会いたくなる。
「いいよ、たまにしか帰れないんだしいっぱい羽伸ばして遊んできな」
「うん…でも…なんか莉奈さんに会いたくなって。だから声聞いて我慢しよっかなって思って電話した」
椎名の言葉は、いつも私の心に真っ直ぐ届く。
いつも真っ直ぐに伝わってくる。
「ねぇ椎名?」
「んー?どしたん?」
「ふふっ」
「え、何で笑ってるん」
私、椎名の、この「どしたん?」って聞いてくる言葉が好きだった。
最初は慣れない関西弁を聞いていると、きつく感じるような時もあったけど、慣れてくるとあったかく感じるようになっている。
「あ、莉奈さん酔ってるんちゃう?」
「ははっ、ちょっとだけ酔ってるかも」
「誰と飲んでたんすか?」
「地元の同級生達」
「えっ、もしかして男もおったん?」
心配そうな椎名の声を聞いていると、胸がキュッとなる。
「いないいない、女ばっかりだったよ」
だから私は嘘をついた。
椎名はすごく心配性。それが分かるから、何もないとはいえ男の同級生もいたとは言いたくなかった。