最後の恋
「莉奈?」
しばらく部屋にこもっているとコンコンッとドアがノックされた。
「んー?」
開いたドアから、お母さんの顔だけがひょっこりのぞく。
「もうすぐ年越すわよ!?カウントダウンしないの?」
「はいはい、行く行く」
カウントダウンしたからといってどうなるわけでもないけれど、なんとなく毎年テレビを見ながらカウントダウンしているうちの家族。
「あ、もう寝ちゃったんだ?ちびっ子ギャング達」
リビングにはもう子供達の姿はなく、お酒を飲みながら大人だけがテレビを見ていた。
「お前も飲むか?」
「あぁ、うん」
お兄ちゃんに言われそう答えると、お母さんはすぐにグラスを出してきてくれた。
酔っているのか、雑に注がれるビール。
「泡ばっかじゃん、ヘタクソ」
「ついでもらっておいてヘタクソはないだろ」
「だってみてこの割合。7:3だよ?いや、8:2かも」
「つべこべ言わず飲めっつーの」
「はいはーい」
「はいは一回だ」
「はーーーい」
「のばすなよ」
「はい!」
「声でけーから」
「もう、うるさいなぁ。ねぇ詩織ちゃん、お兄ちゃんなんかのどこが良くて結婚したの?」
「はぁ?そんなこと今聞く必要ねーだろ。ほら、カウントダウン始まるぞ」
くだらない会話を繰り返しているうちに、今年もあと30秒をきった。