最後の恋


テレビの画面に、HAPPY NEW YEAR とデカデカとテロップが出た。

新しい年の始まり。


「あけましておめでとう!」

「今年もよろしくお願いします」

「こちらこそよろしくね」


目の前では新しい日本酒でお父さん達が乾杯している。



「莉奈?携帯鳴ってるわよ?」

「えっ?あぁ、うん」


テーブルの上に置いていた携帯がブルブルと震えている。


相手を確認した私はそっと席をはずし、部屋に戻って電話をかけ直した。



「もしもし」

「莉奈さんあけましておめでとう!」

「あ、あけましておめでとう」


電話の相手は椎名だった。


「やっぱ一年の始まりは莉奈さんの声聞いとかな!って思って」

「ふふっ、そうなんだ」

「今年もよろしくお願いします」

「うん、私も。よろしくお願いします」


改まったようにそんなことを言い合っていると、なんだか可笑しくて笑ってしまう。

一年の始まり。

椎名の声が聞けて良かった。


15分ほどの会話を終えてリビングに戻ると、いつもは飲まない日本酒のせいからか、お父さんとお兄ちゃんの顔は真っ赤になっていた。


「すごい顔だよ、二人とも」


そう言いながら座った私に、酔っ払いが絡み始めた。



「電話、誰からだったんだよ、彼氏か?」

「関係ないでしょ、別に」

「彼氏だったらコソコソ電話せずに堂々とここで話せばいいじゃないか」


…面倒くさっ。

お兄ちゃんは酔っ払うと口うるさい。

いつもうるさいのに酔うとそれが倍にはるのだ。

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