最後の恋
それでも年明けの仕事は忙しく、みんながいつも以上の仕事をこなさなきゃならない。
私もそう。
どさっと大量に置かれた書類のデータを誤りがないか確認しながら休むことなく打ち込んでいた。
だけど、途中で連続で見つかったデータの誤りに、入力するスピードが落ちる。
その都度誤りを訂正して計算しなおさなければならないからだ。
ったく…一箇所だけならまだしも一体いくつあるわけ?
7つ目の訂正を終えた時、私は隣に座る普段から一番ミスの多い皆川君に聞いた。
「ねぇ、このデータ誰が計算したの?」
「えっ…誰っすかね?」
誰っすかね?って、私が聞いてるんですけど。
「皆川君じゃないんだ?」
「はい、結構ミス多いんすか?」
「結構どころか多すぎだよ。おかげで全然進まないし」
ちょっと苛立ちながらもまた仕事を始めたけど。
8つ目、9つ目のミスを見つけると、私のパソコンを打つ手がピタッと止まった。
「これ、誰が処理したか分かる?」
「あ、僕誰がやったのか確認します、貸して下さい」
「ごめんね、ミス多すぎて無理。誰か分かったらやり直してもらうよう伝えてくれる?」
「はい」
皆川君は、苛立っていた私からすぐにその書類を受けとってくれて。
担当している数人に確認するようにフロアを回ってくれていた。