最後の恋


翌日も会社内の雰囲気は良いとは言えなかった。


いい加減疲れてくる。

気を使われて気を使って。ただでさえ仕事で頭を使うのに、精神的なしんどさが疲れを倍増していた。


早めに帰って家で続きをやろう。

定時で一旦仕事を切り上げ、私は足早に家路についた。



「今から行っていい?」


だけど帰宅後、椎名からそんな電話がかかってきて。


「うん…いいけど」


疲れからか返事に迷ったけど、断る理由を考えるのも面倒になり私はそう答えた。


「よし、やりますか」


椎名が来るまでの間、残りの仕事を済ませるため独り言をつぶやきながらパソコンと向き合った。


何で家でまで仕事してるんだろ、私。


気分が晴れないまま淡々と仕事をしていると、しばらくして家のインターホンが鳴った。



「お疲れさま」

「おじゃましまーす」


椎名は家に来ると、いつものようにソファに腰掛けた。


「あれ?仕事っすか?」

「あぁ、うん、ちょっと残ってたから」



テーブルに置いていたノートパソコンを覗き込むと、そっか、と椎名は小さな声で言った。


「すぐ終わらせるからテレビでも見てて


「うん」


椎名はテレビを付けると音量をかなり小さくしてテレビを見ていた。


邪魔にならないように気遣ってくれているんだと思った。


「よしっ、終了!」


そのおかげで黙々と仕事を進められ、一時間もかからないうちに仕事は終わった。



「ごめんね、せっかく来てくれたのに。お腹空いてるでしょ」

「全然大丈夫、莉奈さんこそお腹空いたんちゃう?何か食べに行こっか?」

「うーん…外に出る気分じゃないんだ。炒飯とか簡単なものなら作れるけど」


私がそう言うと、椎名はとびっきりの笑顔で「じゃあ炒飯!」と言った。


昨日は少しムカついていたけど、この笑顔を見ると悔しいけど帳消しになる。

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