最後の恋


「莉奈さんの考えてること、全然分からんわ…」

「…ごめん」

「だから何で謝るん?何に対してのごめんなん?」

「……」


分からない。

自分でも分からないんだ。何に対してのごめんなのか。



「ちょっとでも迷ってたん?……結婚したいと思ってるん?」

「……」

「言ってくれな分からんやん!何か言ってや!」


強い口調で椎名は私に聞いた。


言いたくない。

迷っていたかなんて、言いたくない。

結婚したいかなんて、口にしたくない。



「言ってや、ちゃんと思ってること」


だけど、椎名の言葉が続いて。


「……迷ってた」


私は自分の気持ちを初めて口にした。


「何で迷ってたん?」

「…最後の…プロポーズかもしれないから」

「えっ?」

「私…今29でしょ?今年の誕生日がきたら、もう30になるの。だから…この先またプロポーズされるなんてことは、ないかもしれないとか…いろいろ考えたんだ」

「俺がするやん!」

「…でも、それはいつかでしょ?いつなのかも決まってない遠い先の話でしょ?」

「それは…いつなのかは分からんけど…」


椎名はそう言うと、黙りこんでしまった。


いつなのかは分からないプロポーズ。

私はそれまで待たなきゃいけないんだよね。


「結婚したいんだ、私…。子供だって産みたい」

「うん…」

「でも、椎名とじゃそれがいつ叶うのかが分からないでしょ?」

「……」

「好きなんだよ、本当に。好きになりすぎて…苦しいぐらい。でも…」

「結局莉奈さんは結婚したいだけやん」

「えっ…」

「結婚できるなら誰でもいいん?プロポーズされたら迷うん?」



誰でもいい?

そうじゃない。プロポーズされたら誰でも迷うわけじゃない。



「違うよ…誰でもいいわけないでしょ」

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