最後の恋



どうしよう、こっちに来る…


会いに来ておいて、どうしようなんておかしいけど、どうしたらいいのか分からなくなる。


「ちょっとここじゃ話しにくいんで、会社出ましょうか。お昼やし」

「えっ、あ…うん」


私が答えると、椎名は足早に歩いていく。

そしてエレベーターに乗り込むと久しぶりに二人だけの空間になった。


だけど、シーンとした静かな空気。

椎名は何も話さない。だから私も黙ったまま。

一階につき会社のエントランスを抜けると、椎名はそのまま歩き続けた。


「ここでいいですか?早川さんと前にランチに来たお店なんです」


そしてとあるカフェの前で立ち止まると、どうしてなのか私にそう言って確認してきた。


「えっ、あぁ…うん」


嫌だなんて言えなくて、黙ってお店へと入った私達。


「僕はBランチかな。松永さん何にします?早川さんはデザート付きのCランチセット食べてましたよ」


座ってすぐに椎名はそう言うと、店員さんを呼んだ。


「Bランチと」

「Aランチ…お願いします」


注文を伝えながら、いろんな思いが駆けめぐっていた。


早川さん早川さんって何なの?


だけど、それよりもショックだったのは、椎名が私のことを松永さんと呼んだことだった。




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