最後の恋
ふと脳裏に浮かんでくる。
「意外やわ〜、松永サンでもそんな女の子っぽいコトするんっすね」
雪が降っていたあの夜のこと。
「気休めやけど、カイロ。めっちゃ寒いからソコのコンビニで買ってきました」
そう言って、椎名は私に暖かいカイロを掴ませて笑った。
それから、あの遊園地のこと。
「クリスマスまでの週末は毎週このイベントやってるらしくて。この前莉奈さん雪降った日、空見ながら手のひらに雪乗せようとしてたやろ?」
椎名は私を見下ろし、手を繋いだまま私にそう聞いた。
「もしかしたら雪好きなんかな?とか勝手に想像してて。色々調べたら人工雪やけど光と音のロマンチックコラボレーションとか?なんかそんなん載ってたから…連れてきたいなって、思ったっていうか」
照れ笑いした顔が愛しくてたまらなかった。
「初デートやし、なんか思い出に残ることしたいなって思って。でもほんま寒かったっすよね、それだけが誤算でした」
何だか…涙が出そうだった。
「足元気をつけて下さいね」
「えっ?あ、うん。ありがとう」
りっちゃんの声に、現実へと引き戻された私。
じゃあ、と手を振りながら歩き出した。