最後の恋
「あ、お母さん?」
翌日、仕事を終えて帰宅すると、私は実家に電話をかけた。
お母さんはいつものように、もしもし松永です、と電話に出た。
「莉奈?どうしたの」
「うん…お父さんもう帰ってる?」
「あ、まだ帰ってきてないけど」
「そっか。あのね…今週の日曜日会ってほしい人がいるから実家に連れて行きたいんだけど」
私がそう言うと、お母さんはえっ?と驚いた声をあげた。
「だから…お父さんにも伝えててもらえるかな」
「あっ、うん、分かった、ちゃんとお父さんに伝えておくわ」
「じゃあ…お願いね」
「うん、あ、莉奈、気をつけて帰ってきてくるのよ?」
電話を切る時のお母さんの声は、すごく嬉しそうな声をしていた。
結婚するって聞いたら、安心してくれるかな。
喜んでくれるかな。
親孝行になるのかな?
薬指の指輪が、キラキラ輝いている。
結婚を決めた昨日の夜、あの公園でサトルがこれをはめてくれた。
キラキラキラキラ輝く指輪。
そして輝くその度に…私はもう結婚するのだと感じる。
もう決まったこと。
自分自身で決めたこと。
だから進むだけだ。
前を向いて、ただ進むだけなんだ。