最後の恋
「お疲れ、松永」
「あぁ、お疲れ様!」
「松永さんお疲れ様です、お先に失礼します」
「うん、お疲れ様〜」
ぽつりぽつりと帰宅していく上司や後輩達に言葉を返しながら、私はこの日まだ仕事をしていた。
社内でインフルエンザが流行り、病欠者が次々と出ていて、決算前のこの忙しい時期に仕事がうまくまわっていない。
佐倉さんに頼んでおいた仕事だけど、その佐倉さんも一昨日からインフルエンザで休んでいて、私がその仕事を引き受けたため昨日と今日こうして残業している。
ふぅ、と一息ついたのは20時を過ぎた頃だった。
黙々と仕事をしていたせいか周りを見渡すと、オフィス内には私以外にもう二人しか残っていなかった。
そしてその二人は、真後ろの席に座る早川さんと部長で。
「松永、早川、遅くまでご苦労さん。部会の集まりがあるから先に帰らせてもらうぞ。お疲れ様」
だけど部長も、20時を過ぎてすぐにそう言って帰っていった。
オフィスに残された私達二人。
静かな空気に包まれながらお互い黙々とパソコンに向かい合う。
背中合わせの席だから、顔が見えないだけまだこの空気に耐えられた。