最後の恋
だけど、エレベーターに乗り、ドアが閉まりかけたその時、早川さんが急いで同じエレベーターに乗り込んできた。
10階から降りていくエレベーターの中、私達の間にはまた静かな空気が流れていく。
そしてやっと1階に着くと、ドアの前にいた早川さんが先に降り、私も続いてエレベーターから降りた。
コツコツと響くふたつのヒールの足音。
と、その時急に前を歩いていた早川さんの足が止まった。
「あのっ…」
「何?」
振り返った早川さんは私をジッと見つめて言う。
「私、椎名くんにOKもらいました」
「えっ?」
「付き合ってほしいって言ったら…OKもらえたんです」
「………そう」
「でも……」
「ん?」
「…や、やっぱいいです。すいません、お疲れ様でした」
早川さんはそう言うと、足早にかけて行ってしまった。