最後の恋


でも、さっきのあれは何だったんだろう。

何か言いかけていたけど…何を言おうとしていたんだろう。


会社から出た私はそんなことを考え、歩きながら駅へと向かっていた。

だけど、ふと視界に入ったベンチに足が止まる。


この場所は、椎名と別れたあの日の場所。
全てがウソだったと告げられた場所だった。


わけもなくベンチに座った私は、左手の薬指に光る指輪をじっと見つめた。


結婚…するんだよね、私。


幸せなはずなのに。

ずっとしたいと思っていた結婚なのに。

なのに…何故なんだろう。



どうしてこんなにも、この光る指輪を見るたびに胸が痛むのかな。


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