最後の恋



「女心ってよく分からないですよね」

「えっ?」

「いや、何か…何考えてんのか全然分からなくて」


桐谷君はそう言うと、はぁっとため息をついた。

佐倉さんと何かあった…なんとなく、そんな気がした。


「男だって何考えてんのか全然分からないよ?」

「えっ?」

「きっと、みんなそうなんじゃないかな。男とか女とか、性別なんて関係ないんだと思う。相手の全てを分かることなんて、できないんじゃないかな…なんてね」


無理矢理笑顔を作り、私は笑う。


心の中なんて、誰にも見えない。分からない。

自分にしか、真実は見えないんだから。



「そうですよね…。僕、佐倉さんと付き合ってるんですけど」

「うん、知ってる」

「あいつ、結構束縛激しくて。携帯チェックとか平気でするし、うちに来た時なんて元カノの写った写真、目の前で捨ててほしいとか言うし…。仕事の付き合いで先輩達と飲みに行ってても、電話とかメール鳴りっぱなしで」


桐谷君はそう言いながら、グチのようなものを吐き出していく。


「可愛いな、って思って付き合ったのに、何か違うんすよね。好きならもっと信じてくれてもいいと思いません?」

「うん…そうだね…。でも、好きだから不安になるんだと思うよ。女の子だし、特にそうなっちゃうんだと思う。桐谷君はカッコいいしさ、余計に心配になっちゃうんじゃないかな」


後輩のフォローをする私。

我ながら、いい先輩じゃん、なんて思ってしまう。

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