最後の恋
「ごめんな、待たせて」
「ううん、大丈夫。ありがと」
日曜の昼下がり。
車の助手席に座る私に、隣の運転席へ戻ってきたサトルが温かいコーヒーを渡してくれた。
「結構並んだんじゃない?」
「ん?ちょっとだけな。でもタルト買えて良かったよ。じゃあそろそろ行くか」
サトルはそう言うと、笑顔で車を発進させた。
お母さんが甘いものが好きで、お父さんは苺が好きなことを覚えていたサトル。
行列ができるくらい苺タルトが美味しいと有名なお店で、外は寒いからと私を車で待たせて30分近く一人で並んで苺タルトを二つも買ってきてくれた。
「あ、この曲懐かしい」
「そうだなぁ」
窓の向こうに見える、移り変わる景色を見ながら、聴こえてきた懐かしい音楽に耳を澄ませた。
サトルと付き合っていた頃、よくこの歌手の曲を聴いていた。
ドライブはいつも、このアルバムを聴いていたような気がする。