最後の恋
【今日会える?】
サトルからそんなメールが届いたのは、ちょうどお昼の休憩に入った時だった。
【うん、大丈夫。】
【そっか、じゃあ今日俺早く終わりそうだし仕事終わる頃、迎えに行くよ】
【うん、分かった。多分6時には出れると思うから】
【了解】
そんなやりとりが終わり、携帯を見つめていた。
「お昼、行きません?」
その時、後ろから声をかけられた。
「あっ、うん。行こうか」
「はいっ」
私が答えると、早川さんはすぐに立ち上がり、どこ行きますか?なんて話しながら一緒にエレベーターに乗り込んだ。
一緒にお昼食べませんか、なんて誘われたのはかなり久しぶりのことで、なんだか調子が狂ってしまう。
「ここにします?もうちょっと歩きますか?」
会社を出てすぐのところにある定食屋の前で、早川さんは立ち止まり私にそう聞いた。
「いいよ、ここで」
そして私が答えると、早川さんが先にお店へと入っていき、私もすぐあとに続くようにお店へと入るとテーブル席に座り、すぐに注文を済ませた。
「今日あったかいですね」
「そうだね、天気いいもいいしね」
不思議な感じだった。
こうして時々、早川さんや佐倉さん達とランチに来ていたけど、あれ以来こんな風に早川さんとランチに来ることはなかったし、今こうしていることが何だか変な気がしてしまう。
「あの…」
そして、向かい合う早川さんが俯き気味に口を開くと、私は何を言われるのだろうとドキドキしてしまっていた。
「何?」
「指輪…今日はしてないんですか?」
「えっ?……あぁ…うん」
言いながら、思わず左手の薬指を隠してしまう。
見られていたなんて、全く気付かなかった。
「つけ忘れたんですか?」
俯いていた顔をあげ、早川さんは私を真っ直ぐ見つめる。
話さなきゃいけない…そう思った。
「外したの…」
「どうしてですか?」
すぐに言葉を返されて、少し黙りこんでしまった。
「結婚ね、やめようと思って」
だけど私が答えると、早川さんはふぅっとため息のような息を吐き、置かれていた水を一口飲んだ。