最後の恋
「あーっ、もう信じらんない」
そしてそう言うとまた一口水を飲んで。
「私、一日でフラれたんですけど」
そう言って頬をふくらませた。
「えっ?」
「猛プッシュで押して押して押しまくって、やっと付き合えたのに…すぐにフラれたんです、椎名君に」
「…そう」
「そう、じゃないですよ。松永さんのせいでフラれたんですよ?」
「えっ?」
「結婚しようとしてる人だって分かってるけど、やっぱりまだ好きだからって。だからそんな気持ちで私とは付き合えないって。ひどくないですか?OKしたくせに」
運ばれてきた定食を食べ始めながら、早川さんは言葉を返せずにいる私にさらに続ける。
「っていうかどう考えても普通は私を選びますよね、私の方が若いしピチピチしてるし可愛いし」
強がりを並べているようだった。
強気な言葉を口にしているのに、早川さんは悲しい顔をしている。
「だいたい松永さんも松永さんですよ。今年で30ですよ?やっと結婚できるのに、それをやめようとするなんて……絶対にバカです」
「バッ、バカって……」
「そんなに思い合ってるなら…さっさとよりを戻せばいいのに」
えっ?
「まぁ、結婚できるかは謎ですけどね」
早川さんはそう言ってフフッと笑う。
「でも、もしよりが戻ったとして。松永さんが椎名くんにフラれた時は……盛大に残念会してあげますから」
「残念会?」
「はいっ、慰める会、私が幹事でやってあげますよ」
早川さんはそう言うと、目が合った私にクスッと笑う。