最後の恋
サトルとの関係にハッキリと終止符をうった翌日。
騒がしい昼どきの社内で、私はスーッと深呼吸をするとドキドキする胸をそっと抑えた。
だんだん近づいてくる営業部。
本当は仕事が終わってから会ってもらおうと思ったけれど。
もしかしたら、私の電話には出てくれないかもしれないし……。
椎名が先に帰ってしまったら会えなくなるかもしれないと思うと、いてもたってもいられなくて。
気が付いたら、動き出してしまっていた。
心臓が、ドキドキうるさい。
目の前には、ドアを開け放たれたままの営業部。
大原くんがいる。桐谷くんも、他の社員たちも。
それから……椎名の姿も瞳に映った。
ゆっくり立ち止まり、もう一度深く息を吸い込む。
そして意を決した私は、口を開いた。
「あのっ!」
意気込み過ぎたせいか、思っていたよりもずっと大きくなってしまった声。
そのせいで、営業部にいたほとんどの人たちの視線が一斉にこちらに向く。
「松永!どうした?あ、こいつに用?」
大原くんはそう言って、そばにいた椎名のことを指差して笑う。
「…うん。椎名くんに……用事があって…それで…」
言いながら、声が小さくなっていく。
いくつもの視線が、私を弱気にしていく。
面白がって賭けゲームをしていた営業部の人たちを目の前にすると、言葉が出てこなくなった。
「用事って何っすか?」
そんな私に、椎名は冷静にそう聞いてきた。