最後の恋
『せっかく初めてちゃんと話せるんやし、桐谷にも初めが肝心やって言われてたんですけど……俺アホみたいに空回ってて…』
……トクン、と。
不思議な音が、胸に響いた。
『しかも、一方的にスキやとか言ってもうて…』
トクン…
また、同じ音が響く。
目の前にいる彼は、今年入社してきたばかりの新入社員で。
顔は見たことがあったし、女子社員たちが営業部にカッコいい子が入ってきた!なんて噂をしていたから存在は知っていたけど。
接点なんてなかったし、今日まで一度も話もしたことがなかった、名前も知らなかったような、そんな相手だ。
年だって、離れ過ぎてる。
っていうか私の方が、ずいぶんと年上。
明らかに、恋愛対象には入らないはずの、椎名。
なのに……何で!?
どうして私…キュンとしちゃってるわけ!?