ハニートースト ~カフェで恋したあなた~
「彼女も絵を描いていて、いつも一緒に出かけて絵を描いた。ふたりで大きな夢を語り合ったりもした。いつか個展を開こうと約束をしてたんだ」
同じ夢を持っている人と知って、私は自分には絶対に入り込めない世界だと思った。
私は片桐さんの絵が好きだ。
でも、絵について語り合うことはできない。
「俺は、アイツともう会うべきじゃないんだよ」
片桐さんは、遠い目をして言った。
片桐さんが今日眠れなかった理由。
それは・・・・・・
彼女が帰国して、片桐さんに手紙が届いたことだった。
「手紙にはごめんの一言もねーんだよ。ひどい奴だよ」
と言いながらも、その表情を見ているととても嬉しそうだった。
もう心は決まっている、と思う。
誰が何を言っても、もう心は決まってる。
「会うべきじゃねーよな?」
そう質問されて、私はどう答えればいい?
「でも、片桐さん・・・・・・会いたいんじゃない?」
本当は、そんなひどい女の人会うべきじゃないよって言いたかった。
また裏切られるよって。
言いたかった。
でも・・・・・・片桐さんが大好きだから。
片桐さんが会いたいと思っているなら、会った方がいいと思った。
そうすれば、片桐さんは前に進めるから。
きっと、止まったままだったんだ。
時間が。
だから、その人以外に好きになれなかった。
本気の恋ができなかったのは、その人の面影を追っていたからなんだ。