ハニートースト ~カフェで恋したあなた~
「お、いらっしゃい。久しぶりだな」
お父さんの声と同時に片桐さんの声が聞こえた。
「どうしてもハニートーストが食いたくなって」
金曜日の夕方。
仕事を抜け出してきた片桐さんは、テーブル席に座り、書類を見ながらあくびをした。
「いらっしゃいませ」
「おー、優海。お前に会いたくて、仕事抜けてきちゃった」
お願いだからそういうことをそんな無邪気な笑顔で言わないで。
また勘違いしちゃうから。
ようやく、私の心と体は、片桐さんとの未来はないんだって理解し始めたのに。
「実は、昨日会ったんだよ。みゆきと。あ、あの写真の」
遅かった。
目の前が真っ白になる。
手が震えそうになった。
私、言うつもりだったのに。
会って欲しくないって。
もう言えないね。
遅かったね。