ハニートースト ~カフェで恋したあなた~
新しい自分
-新しい自分-
私は自分が不幸だなんて思ったことは一度もない。
母が早くに亡くなってしまったことは悲しかった。
でも、母にはたくさんの愛をもらったし、愛を残してもらった。
父は、穏やかで優しくて、母の分まで私を愛してくれたと思う。
中学1年で片桐さんに恋をして、それから今までずっと片思いをしているけれど、ずっと片桐さんだけだったわけじゃない。
他に好きな人を作ろうと努力したこともある。
だから、私のファーストキスはもう奪われているわけで・・・・・・
高校3年で付き合ったクラスの男子と、付き合ったその日にキスをした。
それが、思い出したくもないファーストキスの記憶だ。
それからも、数人の男性とお付き合いをした。
一番長くて3カ月。
私の心が動いた恋愛は、正直言えば一度もなかった。
心の中にはいつも片桐さんがいたから。
「幸せになりたいと思わないの?」
こんな質問をされたので、自分の人生を振り返ってしまった。
康子に誘われて参加したコンパで、隣に座った初対面の男性に言われた。
どうしてそんなことをこの人に言われなきゃいけないんだろう。
「不幸だとは思ってないけど」
そう答えた私の顔は引きつっていたと思う。
「何年も彼氏いないんでしょ?干からびるよ」
そんな嫌味を言われても、愛想笑いで乗りきった。
その嫌味が、下ネタだということに気付いたのは康子に指摘されてからだけど。