ハニートースト ~カフェで恋したあなた~
「片桐さん、次はいつ来る?店」
「ん~、時間あったら寄るけど、いつになるかわかんねーや。今日も仕事抜けて来てるからな」
と片桐さんが壁掛け時計を見た時だった。
入口のドアが開いた。
スラっとした細身の美人な女性が、キョロキョロと店の中を見回していた。
グレーのスーツ。
ストレートのサラサラの髪。
ちょっと化粧が濃いけど、とても綺麗な人。
「あ、何しに来たんだよ!来んなっつっただろー」
え?
あ、片桐さんを探してたんだ。
「片桐さんなかなか帰って来ないからここかなと思って。来ちゃいました」
片桐さんはイライラしたような顔で立ち上がり、お父さんに伝票を渡す。
「あ~、もう帰ります。今日もうまかったっす」
綺麗なその女性は、片桐さんの会社の人のようだ。
「もう帰るんですか。私も一緒にお茶しようと思ったのに」
「お前は、会社の食堂でパフェでも食ってろ!」
「もうっ!ひどい~!」
なんか・・・・・・嫌だな。
“お前”って言った。
ふたりの会話を聞いていると涙が出てきそうになる。
気のせいかもしれないけど、この人片桐さんのこと好きだと思う。
片桐さんの気持ちはわからないけど。
「じゃ、優海ちゃん、またな。エロ本片付けとくから安心しろよ」
私の肩にポンと手を乗せた。
目が合った。
グレーのスーツの美人さんと。
完全に、ライバルを見る目だった。