ハニートースト ~カフェで恋したあなた~
「あのさ、今日はこれを渡したくて」
片桐さんの手から渡されたのは・・・・・・
「うわぁ!!!」
約束していた、あの夜の月の絵。
あの夜見た月。
確かにあの月だ。
一瞬にして、あの日のことが思い出される絵だった。
片桐さんの匂い。
片桐さんのぬくもり。
全部がよみがえってくる。
あの夜のときめきも。
「遅くなっちまったけど。良かったらもらってよ」
「こんな素敵な絵、もらっていいの?どこかの画廊に置かせてもらわなくていいの?」
絵のことはわからない。
でも、この絵はものすごく人の心を掴む絵だと思った。
どんな有名な画家が描いたんだろうって、そんな風に誰もが思うよ。
「お前の為に描いたから」
ふふっと笑った片桐さんは、月を見上げた。
今日の月は、また満月だった。