ハニートースト ~カフェで恋したあなた~
「冗談で言ったわけじゃなかった。俺はあの時、将来優海と結婚しようって思った。そう思ったらラクになれたんだ。もう誰かを愛して傷つくのは嫌だと思ったんだよな。優海だけは俺を裏切らないって思ってた。優海の気持ちも知らないで、失礼なこと言ってしまったな」
恋愛感情じゃなかったとしても、そう思ってくれていたと知って、胸が熱くなった。
そんなにも私のことを信じてくれていたなんて。
「中学生のお前にそんなこと言った俺は、最低だよ。ごめんな。あんなこと言ったから、俺のことずっと好きでいてくれたのか?」
「わからない。でも、片桐さんがいてくれたから私は本当に幸せに毎日過ごせたんだよ。片桐さんがいなかったら、今の私はいないと思う」
永遠の片思いでもいいと思っていた。
中学生の私は、毎日毎日片桐さんのことを考えて、幸せな気持ちで眠っていたんだ。
「ごめんな」
「謝らないで。私が勝手に好きだっただけだもん」
「長い間、気付いてやれなくてすまなかった」
片桐さんは、首を少し傾けながら私を見つめた。
そして、手を差し出し・・・・・・
「これから、ちゃんとお前のこと見るから」
そう言って、握手をした。
大きな手。
この手に包まれていたいと心から思った。
こうして、私の恋心は、片桐さんに知られてしまった。
伝えられた喜びと共に、いつか本当にさよならがやってくるんだという寂しさが生まれた。