ハニートースト ~カフェで恋したあなた~
そばにいたい
-そばにいたい-
仕事で帰りが遅くなると片桐さんからメールが来た。
あきら君に会って、気持ちが落ち着いた。
なるべく航太郎さんのことを考えないようにして時間を過ごしていた。
片桐さんが迎えに来てくれたのは夜の10時だった。
「お迎えに上がりましたよ」
車の前で片手を差し出して、にっこり微笑む片桐さん。
「こんなに遅くにごめんなさい。明日も仕事なのに大丈夫?」
「誰に言ってんの?俺だよ?俺に不可能なことなんてないから」
お得意の自信満々な顔をして、私の頭に手を乗せた。
いつの間にか、こうして片桐さんに触れられることが当たり前になっていた。
ドキっとするけど、安心できる。
大好きな手。
「今日は三日月だな。こういうのも描きたい」
「三日月も綺麗だよね。描いて描いて!」
「お前に頼まれると断れねーな。いつか、描くよ」
信号待ちの車の中。
空には綺麗な薄い三日月が浮かんでいた。