ハニートースト ~カフェで恋したあなた~
時々あきら君が切ない顔をしていた。
私の恋心を知っているから、同情してくれているんだろう。
報われない恋。
いくら近くにいても、片桐さんの恋の相手にはなれない。
私と片桐さんがいちごのケーキを奪い合っている間に、あきら君が何かを見つけた。
それは、私にとっては、見つけて欲しくないものだった。
「何してんだよ。人の家、荒らすなよ」
ケーキが入っていた箱で、あきら君の頭をポコンと叩いた片桐さん。
あきら君の手から、一枚の写真を取った。
「誰、ですか?」
あきら君は真剣な表情で片桐さんを見た。
「見ればだいたいわかんだろ?昔の彼女だよ」
昔の彼女・・・・・・
片桐さんには、一体何人の“元カノ”が存在するんだろう。
そう考えたのは私だけじゃなかった。
「数えきれないくらい元カノいるんでしょ?どうしてその人の写真だけ置いてるんですか?」
それ以上聞かないで欲しかった。
でも、知りたい気持ちもあった。
「あ~、お前・・・・・・痛いとこ、突いてくんなぁ」
「すっげー、好きだったとか??」
片桐さんは、写真を見つめながら目を細めた。
その表情からは、愛しいとか懐かしいとかそんな感情が読み取れた。