ハニートースト ~カフェで恋したあなた~
「隼人が、この店の将来について質問してきたけど、それも聞いてるか?」
コーヒーを入れるお父さん。
「聞いてない。何、それ?」
「聞いてないならいいんだ。忘れてくれ」
そう言って、ふふふと笑ったお父さん。
片桐さんと付き合ったことを知って、お父さんはこの店を継がなくて良いと言い出した。
きっと、私の為。
でも、私は一度決めたことを最後まで貫きたいと思った。
片桐さんを一途に想い続けたように・・・・・・
「隼人が海外に行くならお前もついて行っていいんだぞ」
お父さんは、独りごとのように小さな声でそう言った。
片桐さんに海外から仕事の依頼が来た。
何年もかかる仕事だったから、片桐さんは断ったんだ。
“俺は日本で絵を描きたいんだ”と、強い目で言ってくれた。
私のせいで、片桐さんの夢を壊したくはない。
行っていいよと言ったけど、片桐さんは日本に残ることを決めた。
それからしばらくして、片桐さんの絵がオークションに出された。
新人ばかりが集まるオークションで、片桐さんの絵が100万円で売れた。
きっと、これから誰かの目にとまる。
絶対に画家になる。
私はそう信じてる。