ハニートースト ~カフェで恋したあなた~
「片桐さん、こんにちは」
「お、今日も元気だな。あの日はあのまま帰ったのか?あきらに襲われなかったか?」
片桐さんは右手を口元を覆いながら、コソっとそう言って笑った。
「もちろん大丈夫。あきら君とは絶対あり得ないよ」
「そうかぁ?俺から見るとお似合いなんだけどな」
何回言われるんだろう。
好きな人からそういうこと言われると、本気でへこんじゃうんだけどな。
「片桐さんこそ、どうなの?」
「俺は女には不自由してねーから。こんなこと言ってるとまたあきらに何か言われるだろうな」
メニューを広げた片桐さんは、メニューの上から目だけを出して、厨房のあきら君を見た。
「ほら、にらんでるよ、アイツ」
「後で、怒っとくね。あ、ご注文は・・・・・・」
「ん~、今日はホットコーヒーだけでいいや」
「え?」
珍しい。
甘いものが好きな片桐さんがホットコーヒーだけなんて。
いつも、ハニートーストを注文するのに・・・・・・
「あ、はい。少々お待ち下さい」
注文を聞き、ホットコーヒーを注ぎながら考える。
何かあったのかな。
私は、恋愛経験もないし、片桐さんの周りにいる女性みたいに魅力的でもない。
片桐さんのことを何も知らないかもしれない。
でも・・・・・・わかることもある。
私だからわかること。
今日、片桐さんは元気がない。
何かあった・・・・・・?