ハニートースト ~カフェで恋したあなた~
店の奥から片桐さんを覗いてみる。
新聞を読みながら、ため息をついているように見えた。
「あきら君。私、やっぱり好きなの。片桐さんが」
と意味のわからない宣言をしてから、片桐さんの元へ。
「お待たせしました」
ホットコーヒーの横に、ピンク色のマカロンをひとつ。
「あれ?こんなサービスあったっけ?」
「長年お世話になっているので、今日は特別」
「へ~、10年近く通ってるけど初めてだな」
片桐さんは、マカロンをポンと口の中に入れ、何ともいえない表情をした。
目を閉じて・・・・・・
幸せそうな。
この顔が見られただけでも、マカロンを置いて良かった。
「何か・・・・・・あった?今日の片桐さん、元気ない・・・・・・よね」
遠慮がちに聞いてみる。
店員の私がこんな余計なことを言うべきではないのはわかってる。
ここはカフェ。
ひとりになりたい人もいれば、ここで考え事をしたい人もいる。
片桐さんだって、放っておいて欲しいよね。
「さすが・・・・・・だな。優海ちゃん。実は、ちょ~っと仕事でミスしてさ」
片桐さんは照れくさそうに、手で頭を押さえた。