ハニートースト ~カフェで恋したあなた~





それから数日後、片桐さんが店にやってきた。





「しかし、この店のネーミング、イケてないな」



店に入ってくるなりそんなことを言う。



昔は、“喫茶 海”だった。




今は・・・・・・“カフェ・ド・シー”






うん。


イケてない。


確かに。





「今さらそんなこと言われても・・・・・・お父さんのセンスが悪いんだよ」



とお父さんに視線を送るとお父さんは、にこやかにこう言った。




「海が好きな俺と母さんの店だから、これでいいんだよ」




私と片桐さんは目を合わせて、一瞬何も言えなくなった。



お父さん・・・・・・


今でもちゃんとお母さんのこと愛してるんだね。






「いいな。マスターって」




席についた片桐さんはコーヒーを入れるお父さんを横目に見ながら呟いた。





「優海の名前も、海だもんな」



この名前、大好きなんだ。


海で出会ったお父さんとお母さん。





なかなか子供に恵まれなかったお父さんとお母さんの元に生まれた私は、宝物のように大切に育ててもらった。






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