ハニートースト ~カフェで恋したあなた~
「ああいう夫婦、憧れるな」
片桐さんの視線の先には、天国にいったお母さんの姿もあるようだった。
おしゃべりだったお母さんと、物静かなお父さん。
お似合いの夫婦だった。
「今日は、ハニートーストチョコバナナと、ホットで」
鞄から書類を出しながら、目だけ私の方を見た。
切れ長の目だけど、上目使いをするとクリクリしていてかわいいんだ。
「少々お待ち下さい」
店の奥でニヤニヤしていたあきら君は、忘れたいあの話題を持ち出す。
「あの子とエッチしたのかな~」
「知らないわよ!もうっ!!昼間からエッチなこと言わないで」
鼻歌を歌いながらハニートーストを作るあきら君。
気にならないわけじゃない。
めちゃめちゃ気になる。
でも、聞きたくない。
でも・・・・・・聞きたい。
「あきら君、ちょっと聞いてみて」
「やっぱり気になってんじゃん」
あきら君にポーンと頭を叩かれる。
ここで働いてから、こうして男性とのスキンシップが増えた。
男性といっても、あきら君だけなんだけど。
今までの人生ではこんな触れ合いさえなかった。