ハニートースト ~カフェで恋したあなた~
「片桐さんは、あんたのこと妹としか思ってないんだからね。将来のことちゃんと考えればわかるでしょ?早く他の男もちゃんと見るべきだよ」
すっかり酔っぱらった康子は、私の肩に手を回して何度も同じことを言った。
わかってる。
私はもう子供じゃない。
あんな夢みたいな約束を信じてちゃいけない。
他にいい人はいっぱいいるだろうし、私に合う人もいるのかもしれない。
でも・・・・・・
やっぱり無理なんだ。
コンパに行っても、片桐さんのことばかり考える。
片桐さんだったら、どんな風に食べるかな?とか
片桐さんだったら、きっとここでこんなことを言うんじゃないかな、とか。
あきら君が私を好きかもしれないと思っても、やっぱり片桐さんの顔が浮かんでしまう。
私は、片桐さんじゃないとだめなんだもん。
今あきらめることができるんだったら、ずっと昔にあきらめていたと思う。
「あきらのこと、しっかり見てあげなよ」
別れ際に康子はそう言いながら、私のほっぺを両手で挟んだ。
また思い出す。
高校に合格した時、片桐さんがしてくれた。
“おめでとう”って私のほっぺを両手で挟んでくれたんだ。
やっぱり、片桐さんがいい。
辛くても苦しくても、可能性がなくても・・・・・・
片桐さんを好きでいたい。