ハニートースト ~カフェで恋したあなた~
「いらっしゃいませ。今日はおひとりじゃないんですね」
カウンターから水の入ったグラスを差し出してくれた店員さんは、片桐さんをチラっと見て言った。
片桐さんは、店員さんにペコっと頭を下げ、メニューを広げた。
「何食う?この店はハズレがないから何頼んでもうまいよ」
「ねぇ、このお店、いつもひとりで来るの?」
「そうだな。この店には女の子連れて来たことねーな」
意外・・・・・・
オシャレで薄暗くて、デートにぴったりなのに。
「ここは俺にとっては特別な店なんだ。ひとりで考え事したり、ボーっとしたい時に来るんだよ。だから、ここに女の子連れてくんのはなんだか嫌なんだよ」
「そうなんだ~!いつも女の人と来てる店かと思った」
メニューを広げたまま、片桐さんは顔を私の方に向けた。
そして、メニューの角で私の頭をつつく。
「ば~か!いつも行ってる店に優海を連れていくわけねーだろ」
「そっか。そうだよね。私が彼女だと思われたら困るもんね」
私は片桐さんには似合わない。
地味だし、ガキだし・・・・・・
「ばぁか!そういう意味じゃねーっつうの!この店はお前だから連れて来たんだよ。お前なら、いいかなって思ったから」
どういう意味なのかよくわからなかったけど、なんだか嬉しくてニヤけてしまう。
顔を隠すようにメニューを引っ張る。
「これ、食べたい」
私は、ライスコロッケを指差す。
「お、いいねぇ。それ、俺の大好物」
大きな手で頭を撫でられる。