ハニートースト ~カフェで恋したあなた~
「俺、お前の店もこの店もすっげー好きだから、女は連れて行かない。本気でこの子だって思える子だったら連れて行く気になるのかな~」
片桐さんは独り言のように呟いた。
あきら君が言っていたように、あの写真の女の人を今でも忘れられないのかな。
「俺って、どんな風に見られてんの?」
突然、真顔になった。
大きく開いた目に吸い込まれそうになる。
「どんなって・・・・・・?」
「女口説いて、エッチして、また別の女口説いて、エッチして・・・・・・ってそんな男に見える?」
悲しい顔、してる。
片桐さん、どうしたんだろう。
「そんなこと思ってない」
そう答えたけど、実際は少しはそういう風に見えていた。
見たことはないけど、女の人とたくさんデートしてるんだろうなって。
「多分だけど・・・・・・俺、口説いたことないんだよな」
片桐さんの口から出た言葉に驚いて、一瞬息を吸うのを忘れてしまった。
「え・・・・・・?本当に?」
「そう見られて当然だけど。いつもあきらにも冗談で言ってるし。寄ってくる子はいるけど、俺から頑張って口説いた経験って最近はないよ」
「そうなんだ」
「って、なんで俺はお前にこんなこと話してんだよな」
残りのカクテルを飲み干して、片桐さんはひじをついてため息をついた。
「今日な、会社の先輩とケンカしたんだ。それで、お前に元気をもらいたくて誘った」
片桐さんは、前を向いたまま、穏やかな声で言った。
落ち込んでいた理由をやっと話してくれた。
そんなことがあったんだ。