ハニートースト ~カフェで恋したあなた~
片桐さんは、先輩から言われたひどいことを笑いを交えながら話してくれた。
決して笑えるような内容ではなかったのに。
“今まで辞めていった女もどうせ片桐が手を出したんだろう”とか“今度入る新人も片桐がやり逃げするんだろう”とか。
私にはただ嫉妬しているだけのように思えた。
女子社員にモテる片桐さんが気に入らないんだ。
かっこいいだけじゃなく、仕事もできる片桐さんに嫉妬しているんだ。
「ムカつく!!許せないよ。私が殴ってやりたい!!」
「ははは。そうだろ?俺も殴れば良かったかな」
片桐さんは、相手が先輩じゃなかったら本気でケンカしていただろうと言った。
胸ぐらを掴んだ瞬間に、いろんなことを考えたと。
このまま殴って会社を辞めようかとか。
「どうせ辞めるならかっこよく辞めたいからな」
片桐さんは、いつか会社を辞めようと思っているような口ぶりだった。
やっぱり、絵の道をあきらめきれないんだ。
「絵画関係の仕事ってやっぱり難しいの?」
私は、私の部屋に貼ってある海の絵を思い出しながら言った。
「・・・・・・なぁ、優海。ちょっとぎゅってしていい?」
え・・・・・・??
ええぇ??
どういうこと?