ハニートースト ~カフェで恋したあなた~
「俺もな・・・・・・最初は美術館の警備の仕事も考えたりした。でも、それだと自分の時間がなくて、絵が描けない。今の会社は結構自由だったからさ。ここなら絵の勉強も続けられるって思ったんだ」
知らなかった。
片桐さんがそんなにもいろいろ考えていたなんて。
「片桐さんが就職する時、女の人たくさん泣いたんでしょ?」
「それ、誰に聞いたんだよっ!」
「片桐さんの大学の友達だよ。片桐さんの夢はみんなの夢だったんだよね」
有名だった。
片桐さんを知らない学生はいなかったんだって。
学園祭では、片桐さんの個展が開かれていた。
片桐さんのファンクラブもあったし、ストーカーみたいな人もいた。
そんな片桐さんが、今隣にいるんだ。
夢みたい。
もしかしたら・・・・・・夢?
「お前・・・・・・何、してんの?」
「あ、夢じゃないかなと思って」
私が頬を何度もつねる。
「どうして、夢だと思うんだよ」
「だって・・・・・・憧れの片桐さんが隣にいるから」
あれ?
私、また変なこと言ってない?
「憧れ・・・・・・?俺が?嘘だろっ!」
「嘘じゃない!!」
もう止まらなかった。
憧れ、くらいなら告白にならないよね。
好きとは言ってないから。
これくらい伝えさせて。