ハニートースト ~カフェで恋したあなた~
「で、好きな男、いねーの?」
ゆずのシャーベットをスプーンで突きながら、片桐さんはボソっと言った。
酔った勢いで言ってしまいたい。
片桐さんが好きだって。
「いるけど、いない」
わけのわからない答え。
「ふ~ん。そっか。って、何だよ、それ」
「いるけど、叶わない恋だから」
ここまで言っても片桐さんは気付かない。絶対に。
私はゆずシャーベットを一口口へ運び、体を冷ます。
「叶わない恋なんてねーんだって。好きなら頑張れよ」
好きな人にそう言われちゃうと、悲しくなる。
片桐さんは、私に彼氏ができても寂しくないんだね。
「でも、俺としては・・・・・・ちょっと寂しいけど」
泣いちゃうよ?
片桐さん。
泣いちゃうくらい嬉しい。
寂しいって言ってくれた。
あの片桐さんが・・・・・・
みんなの憧れの片桐さんが、そんなことを言ってくれるなんて。
「何かあれば俺に言えよ。そいつより、俺に言えよ。な~んて」
そいつ=片桐さんってことにいつ気がつくんだろう。
私と片桐さんはこれからどうなるんだろう。
こんなにも好きだけど、好きだと言うことはできない。
この関係が大事だから。