ハニートースト ~カフェで恋したあなた~
「なんでかな。いろんな女の子と付き合ったけど、何か違うんだよ」
「違うって?」
「一緒にいても疲れる。多分、俺が悪いんだ。本当の自分を出せない。かっこつけて、いい男ぶってさ」
これだけモテる人だったら、幻想にみたいなものに苦しめられちゃうよね。
片桐さんはこんな人だ!みたいなみんなの思い込みもある。
「そのままの片桐さんで十分かっこいいのに。無理しなくてもそのままでいいのに」
今日の片桐さんが、本当の片桐さんだとすれば、私はこの片桐さんが大好きだもん。
いつもの店で会う片桐さんも大好きだけど、もっともっともっと好き。
「何、お前。俺のこと口説いてんの?」
「へ?何??」
「はっはっは。嘘だよ。ありがとう。お前はマジ良いこと言ってくれるじゃん」
片桐さんはブランコからぴょんと飛び降りて、ブランコの前の棒に座った。
私はブランコから降りるタイミングがつかめずに、向かい合ったまま片桐さんと話した。
「あ~気持ち良い夜だな」
「うん。気持ち良いね~」
片桐さんは覚えてないよね?
あの夕暮れ。
“お嫁さんにしてやるよ”って言ってくれたこと。
覚えてるわけないよね。
聞いてみようかなって思ったけど、まだ夢から覚めたくないから聞かないでおこう。