ハニートースト ~カフェで恋したあなた~
「優海~、月の絵、描こうかな」
「うん!絶対描いて欲しい!」
片桐さんは、絵の話をする時、目がキラキラ輝くんだ。
その目が好き。
「今日のこの月を描くよ。お前と見たこの月を・・・・・・さ」
初めて動物園で動物を見た子供のような笑顔だった。
遠い月に手を伸ばす。
届かないはずの月が、片桐さんの手の中にあるように見えた。
「一番にお前に見せるから」
「うん。待ってる」
鈍感で、思わせぶりな片桐さん。
期待しちゃうじゃない。
一番に見せる、なんて言われると。
「俺、もう誰も好きになれねーのかな」
呟くように静かにそう言った片桐さんに私は何も言えなかった。
ブランコを止めて、片桐さんの隣に腰掛けた。
「なれるよ。片桐さんの運命の人は絶対にいるから」
片桐さんの太ももに手を乗せた。
こんなことを男の人にするのは初めてだった。
なんだろう。
触れたくなった。
寂しそうな片桐さんに触れたくなった。