ハニートースト ~カフェで恋したあなた~
「何もないよ。本当に。ただふたりでバーで飲んだだけ」
嘘じゃない。
本当にバーで飲んだだけ。
「そんなわけねぇだろうが!絶対何かされただろ?」
何か・・・・・・って?
何もされてないよ。
世間の人が考えるような特別なことは何も。
でも私にとってはとても大きなことがたくさんあった。
頬と頬がくっついたこととか。
抱きしめてもらっちゃったこととか。
手を繋いだこととか。
「ふ~ん。面白くねぇの」
あきら君はふくれっ面で仕事を始めた。
「ねぇ、今日の帰りは予定ある?この前、話せなかったから」
この前は、あきら君とちゃんと話すチャンスだったのに、私は片桐さんを選んだ。
「あ~、もういいや。別に話すことねーし」
冷たくそう言ったあきら君の背中を見つめながら、康子や片桐さんに言われたことを思い出した。
私のことをもしも好きだとしたら・・・・・・
あきら君はものすごく辛いよね。