ハニートースト ~カフェで恋したあなた~
誰かと飲みたいと思っていたその日の夜。
康子からお誘いが来た。
いつもの居酒屋で。
あきら君のことや片桐さんのことを話そうと思っていたのに、それどころじゃなかった。
「信じられない・・・・・・」
康子の涙を見たのは初めてだった。
「滋のバカ・・・・・・」
腐れ縁の彼氏の滋さんから、別れを告げられた。
理由は
“俺のことを好きじゃないように見えるから”だった。
その通りだった。
私から見ても、好きそうじゃなかった。
それなのに、こんなにも泣いている。
「滋がいるのが当たり前だったんだもん。だから、大事とかそんなことわかんなかった」
康子の言葉を聞いて、あきら君の顔が浮かんだ。
あきら君はいつも私のそばにいた。
何でも話せる弟みたいな、頼れるお兄ちゃんみたいな不思議な存在だった。
モテるのに本命の彼女はいなかった。
でも、美琴ちゃんと付き合った。
大事・・・・・・だったんだ。
あきら君。
私にとって、大切な存在だったんだ。