Ⅹ#Sound.t.DL

井上は自分の指を見て言った。


「RUIが味わった痛みってこの切り傷よりも深い心の辛さなのかな…」


俺はただ黙って井上の話を聞いた。


「RUIはホントに可哀想な子だと思う。
それは同情とかじゃなくて、人を裏切り殺してしまったと言う事…
やられた事に怒りを露にするのは分かる、でも…」


井上は先を言おうか悩んで話すのをやめた。


「どうした…?」


俺は井上の顔を覗きこんだ。


「あのさ…もしかしたら、RUIはもういないんじゃないかな…?」


井上は下唇を噛んだ。


「いない…?」


俺は聞き返した。


「そう。誰かを待ってたんでしょ?もうダウンロード通知が届いてるのは四人目だよ?練習場に閉じ込められたなら…」


井上はもう嫌だ、と顔を両手で伏せた。


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